防犯カメラ クラウド録画の可能性

1、クラウドに対する世の中の風潮

昨今のインフラの向上から様々なものがクラウドと呼ばれるサービスを使って行われるようになりました。 データをクラウド上に保存しておく、といった簡単なものから、業務のシステム全体をクラウドにアップしクラウド上で作業もしてしまうことも少なくありません。 また、クラウドデータの安全性も高いものに変わりつつあります。これは個人情報の塊である病院のカルテなどが電子化されていることからも理解できるでしょう。 世の中の流れが一斉にいわゆる【箱もの】からカタチのない【クラウド】に加速度的に変化しつつあります。

では、防犯カメラシステムについては今後どのように変化していくのでしょう。

2、防犯カメラシステムの過去と現状

現在の多くの防犯カメラシステムは、ローカル録画が基本です。一昔前まではタイムラプスビデオレコーダーといわれる機器によってVHSのビデオテープに記録されるものでした。 多くのコンビニエンスストアでは、月曜日から日曜日までVHSのビデオテープをデッキの上に並べて夜中の12時になるとガチャガチャ入れ替える、そうすると一週間分のデータを残しておけました。 この方法だともともと画質の悪い録画にもかかわらず、同じテープを何度も何度も上書き録画することによりさらに劣悪な画質になっていきます。 現在では、そのテープ自体がHDDへと変わり画質の劣化はなくなりました。 また、HDDの大容量化にが先かカメラの高画質化が先かはわかりませんが1TB、2TBの搭載は当たり前となり、お客様によっては10TBほど搭載させて出荷することもあります。

もう一点、変わったのはそのデータをインターネットを使って遠隔地で見ることが出来るようになったことです。 この15年ほどでここまでの変化が起こりました。 こうなってくると次に期待するのは録画のクラウド化となります。

3、クラウド録画の利点

クラウド録画にはローカルレコーダー録画と比べて利点がたくさんあります。まず場所を取りません。弊社でも飲食店などにレコーダーを置く場合はいつも置く場所を確保するのに困ります。 また、録画機を盗まれる、壊されるといった心配もありません。実際に録画機を盗んでいく泥棒がいます。必要な電力も少なくなりますし、HDDの故障の心配もほとんどありません。 昨今、弊社でも街頭防犯として商店街や町内会からの依頼で電柱などに防犯カメラを設置していますが、そういった場所にも設置がしやすくなります。 今後イノベーションが期待されるドローンに関しても機体の軽量化が求められているのでクラウド録画は必須でしょう。

クラウド録画

4、クラウド録画市場の発展予測

今後、防犯カメラの録画がクラウド化していくためには越えなければいけない課題がたくさんあります。私なりに予測してみました。

① コストが逆に高くなることへの懸念

実際に現在出ているクラウド録画のサービスを使おうと思うと、レコーダーを買ったほうが安くなります。 例えば防犯カメラ録画システムをリースで導入すると大体月額料金が3,000円~4,000円です。これには初期費用が掛かりません。 これをクラウド録画にしようと思うと【カメラ一台の録画だけ】で某国内メーカーだと月額19,600円かかります。それ以外にネットワークカメラの購入、設置工事費等のイニシャルコストが必要になります。 どちらにせよカメラの購入、工事の依頼をしなくてはいけない中、4倍以上の料金を支払って導入したいという企業は稀でしょう。 どんなサービスもそうですが、価格が安くなってこそ普及します。

② 販売業者、ユーザーのクラウドに対するアレルギー

販売業者は、モノを販売することで収益を上げています。納品した直後に利益が確保できる物売りから、毎月少しづつ利益が入るサービスへの転換に戸惑うと思われます。 ただ、大手の警備会社は元々の体質から導入することが比較的簡単といえるでしょう。 ユーザー側にもこういったある種のアレルギーはあると思われます。物を買った代金として対価を支払う方法から、カメラをその工事代金を支払ったうえ、毎月々のクラウド使用料支払へと変わるのです。 メーカー側の抜本的な販売スキームの改革や、売り手の利益確保原理の変更がうまく行われれば普及は早くなると思います。

③ キャリアによる通信制限と制限解除にかかる費用

最近はスマホでも容量オーバーによる通信制限がかかるようになりました。 高画質化された防犯カメラの映像を24時間アップロードし続けるには相当量の帯域が必要となり、プロバイダー側の規制がかかる恐れがあります。 一般的なフレッツ光、プロバイダーを使って通信制限を受けたというお話を聞いたことがあります。 その場合、プロバイダーを月額20,000円のサービスに切り替えることで解決するとのことでしたが、予算がつかずクラウド録画を断念されたそうです。 年間にすると240,000円かかるプロバイダー料金は、ハイスペックなレコーダーが購入できる金額です。キャリアによっては低価格のサービスも出てきたようで、今後の動向が注目されます。

これらのことを踏まえると、5年後や10年後に月額サービスに抵抗感のない大手警備会社を主体とした防犯カメラのクラウド化が進むのではないかと予測できます。 大手警備会社は競争も激化しているためサービスの価格安定も早い時期に起こりえる気がします。

爆発的な普及にはコスト面の解決が先行しますが、防犯カメラ需要は必需品と比べれば低いレベルにあるので低コスト化と普及が同時に行われるのではないかと予測します。

5、総括

クラウド録画は今後必ず普及すると思われるが、まだまだ時間がかかると思われます。

その理由はコストが高くなる問題が最も高く、それ以外の理由として販売する側の利益確保の体質の問題もありますが、電気通信事業法の緩和やキャリア側の通信制限など様々な問題を解決しなくてはいけません。 普及が進みサービスが乱立すればコストも下がってくるでしょうが、競争が起こるほどのサービスの乱立も今のところ見込めません。 5年後、10年後に普及するサービスとして今からその動向を注視しておくべきものと思われます。

株式会社トリニティー代表 兼松拓也 (2017.6.27)